もう無視できない!IFRS(国際財務報告基準)っていったい何?

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国際財務報告基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)とは、国際会計基準審議会(IASB:International Accounting Standard Board)によって設定された会計基準の総称です。

IFRSは1960年頃から世界共通の「会計におけるモノサシ」が必要であるという認識から議論が始まり、2005年よりEU域内市場での統一会計基準として採用されています。

現在では、IFRSは世界120カ国以上で採用されている会計基準となっており、先進国でIFRSを強制適用していない国はアメリカと日本だけという状況になっています。

そこで今回は、このIFRSについて解説していきたいと思います。

1.IFRSの特徴

IFRSの主な特徴について、日本基準と比較しながら解説していきます。

(1)原則主義(プリンシプル・ベース)

原則主義とは、会計基準の設定にあたり、企業が会計処理の方法を判断するときの考え方や枠組みだけを示すというものです。IFRSでは、この原則主義という考え方を基礎に会計基準が設計されているため、会計処理の判断のための数値基準といった具体的な判断基準や処理方法は会計基準にはあまり示さず、原則的な考え方に従って、企業が自ら適用すべき会計処理を判断することになります。

IFRSがこの原則主義を採用した理由としては、グローバルスタンダードを目指していく上で、「IFRSを適用する企業が個々の状況に応じて最も適合する会計処理を選択することになるため、IFRSを適用する各国の法制度が異なっても、支障なく機能する」点が大きいと考えられます。

一方、原則主義の対極にあるのは「規則主義(細則主義)」です。この規則主義に基づいた場合、どの様な会計処理を行うべきかを、会計基準において細かく定め、この規則に基づき会計処理や表示の判断を行うことになります。この規則主義は,米国基準や日本基準が採用しています。

なお、原則主義を採用するIFRSでは、企業側が原則的な考え方に従って自ら会計処理の判断をする必要があるため、財務諸表の開示の際には、「なぜそう判断したのか」という理論的な根拠を注記により開示するため、IFRSの注記は日本基準の約3倍になるとまで言われています。

(2)貸借対照表を重視

IFRSは、投資家や債権者が企業価値評価のために必要とする情報を提供することを主な目的としています。

この目的を達成するために、資産評価には公正価値の考え方が広範に用いられ、また固定資産を減損処理・再評価することで、企業が保有する資産が将来的にどれだけのキャッシュフローを生み出せるかを投資家に適切に伝えようとしています。

つまり、損益計算書よりも貸借対照表を重視しているといえ、「資産負債アプローチ」を採用しているといえます。

一方、日本の会計基準は「損益計算書重視(収益費用アプローチ)」を基本的なスタンスとしています。これは純利益(実現利益)を我が国の会計基準が重視していることからもわかります。ただ、近年では税効果会計の「資産負債法」の採用や包括利益の導入、資産除去債務の負債計上等、貸借対照表を重視した考え方も台頭してきているため、正確には日本基準は、損益計算書重視と貸借対照表重視のハイブリットであるといえます。

(3)グローバル・スタンダード

IFRSは、会計におけるグローバル・スタンダードを志向しているため、税務への配慮等といった各国の個別的な事情は加味しないという点に特徴があります。

日本基準の場合、日本の税制や会社法への関連などを加味して会計基準が設計されることから、日本の独自性が不可避的に加味されますが、IFRSはこのようなことはありません。

また、英語は実質的に世界の共通語といえますが、IFRSではすべてこの英語が用いられることになります。これにより、どの国でIFRSを適用する際にも解釈の違いなどをなくすことが可能といえます。


2.我が国におけるIFRSの適用状況

企業会計審議会は2009年6月に「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」を公表し、これを踏まえ2009年12月に関係内閣府令が改正され、2010年3月期から、IFRSに準拠して作成した連結財務諸表を金融商品取引法の規定による連結財務諸表として提出することが認められています。

つまり、我が国では連結財務諸表の作成において、IFRSを任意で適用できることになっています。

(1)IFRSの適用要件

従来、IFRSを任意適用するためには、以下の要件を満たすことが必要とされていました。

(a)上場会社であること

(b)有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに関わる記載を行っていること

(c)IFRSに関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、当該基準に基づいて連結財務諸表を作成することができる体制を整えていること

(d)国際的な財務活動・事業活動を行っていること(外国に資本金が20億円以上の連結子会社を有していることなど)

しかし、IFRSの任意適用が可能な会社(特定会社)の要件を緩和し、IFRS任意適用会社の範囲の拡大を図るために、平成25年10月28日に内閣府令第70号「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」等が交付され、この結果、上記の適用要件のうち、(a)と(d)が削除されています。

よって、我が国におけるIFRSの適用要件は、上記の(b)と(c)のみとなっています。

(2)現在のIFRS適用会社数

2013年9月時点におけるIFRS適用会社は16社、任意適用予定の会社は5社に過ぎず、上場会社約3400社あることを鑑みると圧倒的に少数派でしたが、2015年8月現在では(1)に示したIFRSの適用要件緩和などにより、IFRS適用会社が急増しています。

・IFRS適用済会社数:68社

・IFRS適用決定会社数:23社

3.IFRSの導入のメリット、デメリット

我が国においてIFRS適用会社は今後も増加していくことが想定されますが、IFRSを導入する上でのメリットとデメリットについて、以下で解説していきます。

(1)IFRSの導入のメリット

① 比較可能性の向上

数多くの国や企業が採用するIFRSを導入することで、国内外の投資家にとって、提供される財務情報の比較可能性が高まり、財務分析が容易になるといえます。またこの結果、投資家からの信頼度は上がり、海外資金調達コストが低下するという効果も期待できます。

② 経営管理の効率化

日本所在の親会社がIFRSを導入すれば、海外子会社を含むグループ全体で同じ会計基準を使用することになります。つまり、共通の「モノサシ」で親会社を含むグループ企業の業績の把握できるため、より分析しやすい情報を入手することができます。この結果、より効率的な資源配分やより生産性や成長性の高いグループ企業に資本投下する等の意思決定を行うことも可能となります。

(2)IFRSの導入のデメリット

① 導入コストがかかる

IFRS導入前に利用していた会計システムを、IFRSの適用により変更する必要がありますが、この際に多額のシステム構築費用が生じる場合があります。また、IFRSの導入を機にグループ企業の会計システムを統一する等を実施する場合には、さらにコストがかかることになります。

② 現場での対応に労力がかかる

IFRSの導入の際には,IFRSの会計基準に精通している人材を確保する必要性があり、また自社のビジネスモデルや現況を勘案した上で、原則主義に基づきどのような会計処理を適用するべきか判断するのに非常に労力がかかるといえます。

特に、有形固定資産の減価償却方法の選択、耐用年数の見積り、収益認識、社内開発費の資産化、資産(のれんを含む)の減損、金融商品の公正価値測定等、見積りの要素を多く含む項目に対してどのような会計方針を選択するかを決定するのが非常に困難と言われています。

③ 個別財務諸表は日本基準での作成が必要

IFRSの任意適用は連結財務諸表に限定され、個別財務諸表は日本基準により作成する必要があります。また、会社法で作成が求められる計算書類についても、個別計算書類については日本基準による作成が求められます。したがって、連結財務諸表を作成する際には、一度個別財務諸表の数値をIFRSに基づき修正する手間がかかります。

なお、個別財務諸表のみを作成する会社においても、IFRSでの個別財務諸表に加え、日本基準での個別財務諸表を作成する必要があるため、この点でも手間がかかるといえます。

IFRSは世界の大半の国や地域で適用されており、また今後、IFRSを適用する日本企業は増加する傾向にありますので、ビジネス社会で働いていく上では無視できない存在だと思います。まずは、今回の記事でIFRSの概要を理解してもらえればと思います。

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