キャッシュフロー計算書の読み方 財務諸表の読み方シリーズVol2 基礎編

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ビジネスマンにとって必須の知識と言われる会計知識。多くの人が会計に関する入門書を購入し一度は勉強したことがあると思います。しかし、なんとなくわかるんだけど、何かしっくりこないという感想をお持ちの方も多いと思います。

そのため、財務諸表の読み方シリーズでは、会計の考え方について、分りやすく解説していくことを目的にしていきたいと思います。

今回は、キャッシュ・フロー計算書の読み方について説明していきます。

1.キャッシュ・フロー計算書とは

(1) キャッシュ・フロー計算書の必要性

キャッシュ・フロー計算書(C/S)は、一会計期間のキャッシュ(お金)のフロー(流れ)を表示する財務諸表です。貸借対照表を見れば、期首のキャッシュの額、期末のキャッシュの額は分かります。しかし、当期のキャッシュの流れ、すなわち、どのような活動でキャッシュが増減したかまでは開示できないという問題点があります。

下記の例で確認してみましょう。

№4①

貸借対照表から、キャッシュ(現金)が21,000円(71,000円-50,000円)増加していることがわかります。しかし、この21,000円をどのような活動で増やしたのかはわかりません。この「キャッシュをどのような活動によって増やしたか」という情報は、会社の経営状況を見る上でとても重要です。例えば、下記の2つのケースをみてみましょう。

①本業の活動で21,000円キャッシュを増やした

②借金をして21,000円キャッシュを増やした

この場合、同じ21,000円でも実力があるのは①の方ということになります。このため、会社はキャッシュの増減理由を明らかにしなくてはいけないのです。

(2) 損益計算書の当期純利益とキャッシュの増減額は一致しない

貸借対照表からでは、キャッシュの増減理由はわかりません。しかし、「儲け=キャッシュの増加」と考えれば、損益計算書の当期純利益がキャッシュの増減額を表しても良さそうです。しかし、当期純利益とキャッシュの増減額は一致しません。

先ほどの具体例では当期純利益は6,000円ですが、キャッシュの増加は21,000円となっており、大きくズレています。このように、利益とキャッシュの増加額は一致しないことが一般的です。この理由には大きく3つあります。

① 売上債権・仕入債務

例えば、「5,000円で掛け売上を行った」というケースを考えます。

この場合の、仕訳及び財務諸表への影響は以下のようになります。

№4②

ご覧のとおり、利益とキャッシュの増加額は一致していません。なぜなら、掛け売上というのは、「利益は計上するが、キャッシュはまだ増加しない」という取引だからです。そのため、売上債権がある場合には、利益とキャッシュは一致しないことになります。

また、仕入債務がある場合(掛け仕入の場合)も同様です。掛け仕入は、「費用は計上するがキャッシュは減少しない」という取引だからです。

② 減価償却

減価償却費も利益とキャッシュがズレる典型例です。

例えば、「5,000円の減価償却費を計上した」というケースを考えます。

№4③

この場合も、利益の額とキャッシュの増減額はズレています。減価償却は損益計算書において費用が計上されますが、相手勘定は建物の減少になるためキャッシュは出ていかないからです。(このような費用を非現金支出項目といいます)そのため、減価償却を行うと、利益とキャッシュの金額はズレることになります。

③ 固定資産の購入や借入金など、損益計算書に計上されない取引

キャッシュを払って土地を購入した場合には、キャッシュは減少しますが、損益計算書には費用はあがりません。また、借入金を行った場合には、キャッシュは増加しますが、収益はあがりません。このように、損益計算書に計上されない取引を行った場合には、利益の増減額とキャッシュの増減額はズレることになります。

これらの3つの理由から、当期純利益とキャッシュの増減額はズレてしまうのです。

(3) キャッシュ・フロー計算書は財務3表の1つ

上述のとおり、貸借対照表と損益計算書だけでは、重要な情報であるキャッシュの増減理由は判明しません。そのため、その部分を明らかにするキャッシュ・フロー計算書が必要になるのです。キャッシュ・フロー計算書はその重要性から、貸借対照表、損益計算書と合わせて財務3表と呼ばれます。

2.キャッシュ・フロー計算書の基本的な構造

(1) キャッシュ・フロー計算書の3つの区分

では、実際にキャッシュ・フロー計算書をみてみましょう。

№4④

※ CFはキャッシュ・フローの略称

これがキャッシュ・フロー計算書ですが、まずは色が塗られている部分に注目して見て下さい。その部分だけ取り出すと以下のようになります。

№4⑤

このように簡略化してみると、キャッシュの21,000円の増加を3つの理由にわけて表示していることがわかると思います。つまり、このキャッシュ・フロー計算書から、「本業によりキャッシュを11,000円獲得したが、固定資産の購入で50,000円のキャッシュを支出し、借入金の増加で60,000円のキャッシュを獲得し、その結果、21,000円キャッシュが増加した」ということがわかるのです。

繰り返しになりますが、キャッシュ・フロー計算書では、キャッシュの増減理由を大きく3つに分類します。具体的には、キャッシュ・フロー計算書では、キャッシュの流れを、『営業活動によるキャッシュ・フロー』、『投資活動によるキャッシュ・フロー』、 『財務活動によるキャッシュ・フロー』の3つの区分に分けて表示していくことになります。

№4 19

このように3つに分類することで、本業でどれだけキャッシュを獲得したか、将来の利益のためにどれだけ投資活動のキャッシュを投下したか、本業と投資活動を維持するための財務活動によりどの程度のキャッシュを調達したかを開示することができるようになるのです。

具体的に、各区分に計上される主なものを説明します。

(2)  営業活動によるキャッシュ・フローの増減

営業活動によるキャッシュ・フローは、本業から得られたキャッシュの増減額ですが、その本業をさらに以下の4つに区分します。

№4 20

このように分類することで、本業のどのような活動からどれくらいキャッシュが増減しているかが明確になるのです。

(3)  投資活動によるキャッシュ・フローの増減

投資活動によるキャッシュ・フローの区分には、事業を拡大するためにどの程度の資金を投下したのか、余剰資金をどのように運用しているのかに関するキャッシュ・フローを表示します。

具体的には、以下のような項目が表示されます。

№4 21

有形固定資産の売買、貸付金の取引、有価証券の売買は、キャッシュ・フローの増減は伴いますが、基本的には利益に影響は与えません(売買損益や減価償却は除く)。しかし、キャッシュの増減を伴うため、キャッシュ・フロー計算書では、投資活動によるキャッシュ・フローという区分に計上することで、表示する必要が生じるのです。

上記具体例では、土地を50,000円で購入しているため、固定資産の購入による支出が△50,000円計上されることになります。

(4)  財務活動によるキャッシュ・フローの増減

財務活動によるキャッシュ・フローの区分には、事業を維持する資金や、投資活動の資金を確保するために、どれだけの資金を調達したり、返済しているのかに関するキャッシュ・フローを表示します。

具体的には、以下のような項目が表示されます。

№4 22

借入金に関する取引、増資による取引、配当金の支払いは、キャッシュ・フローの増減は伴いますが、基本的には利益に影響は与えません。しかし、キャッシュの増減を伴うため、キャッシュ・フロー計算書では、財務活動によるキャッシュ・フローという区分に計上することで、表示する必要が生じるのです。

上記具体例では、新規で借入れを60,000円行っているため、借入れによる収入が60,000円計上されることになります。

3.キャッシュ・フロー計算書の読み方(状況による会社のステージ分析)

キャッシュ・フロー計算書は、各区分のキャッシュ・フローの状況により以下の8つのパターンがあります。以下の組み合わせからどのような経営状況が読み取れるのかを見ていきましょう。

№4 25

まず、ケース1~ケース4の方が、ケース5~ケース8よりも基本的には望ましいと言えます。なぜなら本業の営業活動からのキャッシュ・フローがプラスであるというということは、企業が永続的に活動をしていくことで最も重要なことだからです。

その上で、各ケースの特徴を簡単に説明していきます。

ケース1は成長企業である場合が多いと言えます。本業からキャッシュを稼ぎ、投資活動に資金を投下し、一部足りない部分を財務活動により調達していると言えます。成長している企業は、設備の新規投資などを積極的に行うため、その投資資金を賄うための借入金も増加する傾向が強いので、ケース1になることが多いのです。

ケース2は、成熟企業や優良企業である場合が多いと言えます。本業からキャシュを稼ぎ、投資活動に資金を投下し、さらには余剰資金で借入金も返済できているためです。

ケース5~ケース8は、営業CFがマイナスであるため、基本的には望ましい状態ではありません。しかし、ベンチャー企業で急成長している場合には問題がないと言うこともできます。

アマゾンの様に、営業CFがマイナスでも、どんどん投資をすることで、まずは企業規模の拡大を優先し、不足分の資金は増資などの財務活動で賄うという成長パターンもあるからです。そのような場合にはケース6のようなキャッシュ・フローの状況になるのです。

また、再建過程の会社ではケース7やケース8のようになります。たとえば、「今後、主力事業に特化して競争力を高めるために、本社ビルや他の事業を売却することで資金を確保する」というケースが該当します。この場合には、本社ビルの売却収入があるため、投資活動によるキャッシュ・フローが増加します。このような場合は、現在は営業CFがマイナスでも、将来的には再建し、営業キャッシュ・フローが改善に向かうような場合もあるのです。

ですので、一概に8パターンの組み合わせだけで、業績の良し悪しを説明できるものでもないですが、基本的には、本業からのキャッシュ・フローがプラスであるパターン1~パターン4が望ましいと言えるのです。

4.キャッシュ・フロー計算書の形式

(1) 直接法と間接法

貸借対照表や損益計算書は形式は1つしかありませんが、キャッシュ・フロー計算書は2つの形式(直接法と間接法)があります。

両者を並べて比較してみます。

№4⑥6

先ほど示した、キャッシュ・フロー計算書は左の直接法です。対して、右が間接法です。ひと目でわかると思いますが、直接法と間接法は非常に似ています。両者の違いは、小計の上の部分のみです。それ以外は全く同じになります。

また、キャッシュ・フローの3つの区分の営業CF、投資CF、財務CFはどちらも同じになります。(色が塗られている部分です)

以下では、具体的に両者の違いを説明します。

(2) 直接法

上述したとおり、直接法では本業から得られたキャッシュの増減額を以下の4つに区分します。

№4 20

詳しく中を見てみると、

№4⑦

商品を売ることで95,000円キャッシュを獲得し、商品の購入で50,000円、人件費で20,000円、それ以外の活動で10,000キャッシュを支払ったということが明確になっています。

このように、活動の中身を明らかにするのが直接法です。

(3) 間接法

対して、間接法は損益計算書とキャッシュ・フロー計算書のつながりを重要視した作成方法です。具体的には、損益計算書の利益とキャッシュ・フロー計算書のキャッシュの増減額のズレに注目します。

構造を確認した方がわかりやすいので、下記の図で確認します。

① 損益計算書の税引前当期純利益をキャッシュ・フロー計算書の先頭に持ってきます

№4⑧

② その下に利益とキャッシュ・フローがズレてしまっている原因を記載します。

№4⑨

上記の図の破線で囲まれた部分が、ズレの原因です。このように利益とキャッシュのズレを明確にするのが間接法によるキャッシュ・フロー計算書の特徴です。

(4) 実務で一般的なのは間接法によるキャッシュ・フロー計算書

このように、キャッシュ・フロー計算書は2つの作成方法が認められています。しかし、日本の実務において一般的なのは間接法です。

具体的には、99%が間接法により作成をしており、直接法で作成している企業は1%程度しかありません。(2014年3月期決算会社2、420社の内、直接法は32社、残りはすべて間接法)これは、間接法で作成する方が実務的な負担が軽いというのが一番の理由です。

ここまででキャッシュ・フロー計算書の基礎的な読み方については説明できました。もうこれでキャッシュ・フロー計算書はある程度読めるようになったはずです。

しかし、さらに間接法の理解を深めたいという方向けに、間接法の仕組みをもう少し深く掘り下げてみます。よりキャッシュ・フロー計算書を理解したいという方はあと一息頑張りましょう。

4.間接法の仕組み

税引前当期純利益と営業CFがズレる理由はなんでしょうか。ズレる理由は様々あるのですが、代表的なものを2つ紹介します。

(1) 売上債権の増減・仕入債務の増減

① 売掛金の増加

先ほどの具体例では「売上債権の増減 △5,000」という項目があったのでその部分を説明します。

№4⑩

例えば、以下のケースを考えます。

「5,000円で掛売上を行った」

この場合の、仕訳及び財務諸表への影響は以下のようになります。

№4⑪

上記の財務諸表を「利益とキャッシュのズレ」に注目してみて下さい。そうすると、「利益は5、000円計上されているが、キャッシュは増加していない」ということがわかると思います。つまり、利益とキャッシュがズレているのです。

この理由はなんでしょうか?

№4⑫

それは、「掛売上」をしたからです。仮に、掛け売上ではなく現金売上をしていれば、現金の増加額と利益の額は一致します。そのため、まさしく「掛けで売ったこと」、つまり、「売掛金」がズレの原因なのです。

№4⑬

売掛金がある場合には、その分だけキャッシュの増加がなかったことになるので、上記のようにキャッシュ・フロー計算書上、マイナスの調整をすることになるのです。これが△5,000円の意味です。

ここで、1つ結論を確認しておきましょう。

売掛金の増加=「利益は計上」しかし「キャッシュは増加しない」

よって、利益からキャッシュの増減額を計算する場合には

利益 - 売掛金の増加額 = キャッシュの増加額

となります。

② 売掛金の減少

上記のケースの続きを考えます。つまり、「翌期に売掛金5,000円を回収した場合」です。この場合、仕訳及び財務諸表への影響は以下のようになります。

№4⑭

回収したので、売掛金が減少していますね。

また、先ほどと同じように利益とキャッシュのズレで考えてみましょう。「利益は計上されていないが、キャッシュは5,000円増加している」ことになります。つまり、やはり利益とキャッシュの増加額はズレています。

この原因も「売掛金」です。つまり、「売掛金の回収」は利益は計上されませんが、キャッシュは増加するので、売掛金が減る分だけ、利益とキャッシュの額はズレるのです。

キャッシュ・フロー計算書は以下のようになります。

№4⑮

ここで、売掛金が減少する場合の結論を確認します。

売掛金の減少=「利益は計上しない」しかし「キャッシュは増加する」

よって、利益からキャッシュの増減額を計算する場合には

利益 + 売掛金の減少額 = キャッシュの増加額

上記の①及び②をまとめると以下のようになります。

№4 23

また、これらは「買掛金」と「仕入」という費用とでも成り立ちます。

商品を掛けで購入した場合、費用が発生する(つまり利益は減少する)が、キャッシュは減少しません。つまり、買掛金の分だけ利益とキャッシュがズレることになります。

買掛金の増加=「利益は減少する」しかし「キャッシュは減らない」

よって、利益からキャッシュの増減額を計算する場合には

利益 + 買掛金の増加額 = キャッシュの減少額

また、その掛け代金を払った場合には、費用が発生しない(つまり利益は減少しない)が、キャッシュは減少します。

買掛金の減少=「利益は減少しない」しかし「キャッシュは減る」

よって、利益からキャッシュの増減額を計算する場合には

利益 - 買掛金の減少 = キャッシュの減少額

まとめると以下のようになります。

№4 24

これが売上債権の増減・仕入債務の増減による,利益とキャッシュのズレの調整です。

(2) 減価償却費

仮に減価償却がある場合には、間接法において減価償却費を調整します。

例えば、減価償却費5,000計上した場合には以下のようになります。

№4⑯

この場合、当期純利益は△5,000円ですが、キャッシュの増減額はゼロになりズレています。これをもとに間接法のキャッシュ・フロー計算書を作成してみましょう。

① 税引前当期純利益をキャッシュ・フロー計算書に写す

№4⑰

② 減価償却費を調整する

№4⑱

キャッシュ・フロー計算書の読み方 基礎編は以上です。

最後は、間接法の仕組みまで説明しましたが、この部分は非常に難しい内容です。そのため、まずは、キャッシュ・フロー計算書の3つの区分及びそのプラス・マイナスによる8つのケースの分析の部分を理解してもらえればと思います。

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