日商簿記検定の試験範囲変更

日商簿記試験範囲が大幅に変更 簿記

日商簿記検定の試験範囲が大きく変更されました。

今回は改正の内容から、合格対策まで詳しく解説していますので、日商簿記検定を受験される方または検討されている方は、是非参考にしてください。

1.日商簿記検定試験改定の趣旨

(1) 日商簿記検定2級の位置づけ

今回の改定は、3級から1級すべての級に影響しますが、その主な趣旨は日商簿記2級の改定です。

まず日商簿記2級の位置づけですが、商工会議所によれば以下のようになっています。

企業の財務担当者として必要な高校(商業高校)程度の商業簿記、工業簿記の知識が身につき、株式会社の経営管理に役立つ。財務諸表を読むことができ、自社や取引先の経営内容を数字から把握できる。

上記説明の中の、「企業の財務担当者として」「株式会社の経営管理に役立つ」という文言からわかるとおり、日商簿記検定2級は実際のビジネスにおいて役立つことが期待されている資格です。

対して、下位級である3級は簿記の基礎という位置づけであるため、実際のビジネスで使える知識としては不十分です

また、1級は公認会計士・税理士など国家資格への登竜門という位置づけであるため、知識としては過大すぎるという側面があります。

このようなことから、日商簿記検定の中心は2級と言えます。実際に、金融機関をはじめとする多くの企業では、日商簿記検定2級の取得を薦めています。

(2) 従来の日商簿記2級の問題点

日商簿記2級はビジネスの多くのシーンで役立つことが期待されている資格ですが、その試験範囲は、今まで、抜本的に見直されることはありませんでした。

その結果、昨今ビジネスが大きく変化してきた一方で、簿記2級だけがその変化から取り残されてしまったのです。

そのため、現在では一般的でないが試験範囲に残ってしまっている論点(特殊商品売買、複数仕訳帳制など)や、現在では一般的だが、試験範囲外となってしまっている(リース会計、外貨建取引、連結会計など)論点のように、実務と試験の乖離が大きくなってしまったのです。

そのため、これらに対応するために日商簿記検定2級の有用性を高めるための大改正が行われることになりました。また、その結果、他の級にも少なからず影響を及ぼしています。

2.日商簿記検定の改定について

まずはおおまかな改定の各級への影響を説明します。

(1) 日商簿記検定3級への改定の影響

一部の論点が試験範囲から除かれました。具体的には、『伝票の一部』と『有価証券の決算の会計処理』です。しかしながら、基本的には、これら以外の変更はないため、3級については、改正の影響がほとんどないと言っていいでしょう。

(2) 日商簿記検定2級への改定の影響

上述したとおり、2級への改定の影響はとても大きなものになっています。

① 従来1級の試験範囲であった論点が2級の試験範囲に変更された(連結会計、リース会計、税効果会計など)

② 従来日商簿記検定の試験範囲でなかったが新しく試験範囲に加わった(クレジット売掛金、製造業を営む会社の決算処理など)

③ 従来2級の試験範囲だった論点が削除または1級へ移動した(特殊商品売買、社債など)

 

①・②が2級の試験範囲を増やすもので、③が減らすものですが、この内一番影響が大きいのが①の内容です

つまり、1級の試験範囲から移動してくるものが多いのです。その結果、トータルでは試験範囲は大きく増加することになります。

なお、2級の試験科目は商業簿記だけでなく工業簿記もありがますが、今回の改定が影響するのは、商業簿記のみとなります。

(3) 日商簿記検定1級への改定の影響

一部の論点が2級の試験範囲になりましたが、2級の試験範囲の論点は、1級の試験範囲でもあるため、改正の影響はほとんどありません。

3.試験の変更の影響

(1) 日商簿記検定2級取得のための勉強時間

試験範囲の拡大により2級取得のための勉強時間は増加します。改定前の2級の場合には2ヶ月から3ヶ月で取得可能といわれていましたが、改定後は4ヶ月から6ヶ月かかると予想されます。

(2) 追加された論点の難易度および合格率

簿記2級に追加された論点の多くはもともと1級の試験範囲だったことから察することが出来る通り、どれも難しい論点です。

しかし、論点の難易度ほど試験問題が難しくなることはないと予想できます。

なぜなら、商工会議所において、受験生の負担が大きくなりすぎないように、一部の難しい論点については、問題文をわかりやすくする、単純なケースのみを出題するなど、むやみやたらに難しくならないように工夫がされることになるからです。

また、合格率はどうなるのでしょうか?

今回の改定後の合格率について商工会議所から方針は名言されていません。一般的に試験が難しくなると合格率は下がりますが、簿記2級については多少下がることはあっても長期的に見て大きく下がることはないと予想します。

なぜなら、簿記2級は企業において取得することが推奨されるという役割が期待されており、合格率が低くなってしまうと、そのような期待に応えられなくなっているからです。

(3) 勉強の方法(独学は可能か?)

従来まで、2級は独学でも取得することが可能ですが、改定後は独学での合格可能性は今までよりも低くなることが予想されます。

上述した「学習期間の増加」や「難解な論点の増加」というのは一般的に独学を難しくする要素だからです。従来の試験においても1級は独学が困難と言われていました。

モチベーションを保ち、正しい理解を行い、短期で合格するためにも、スクールに通う、通信で学習をするということを検討することがおすすめです。

(4) 取得する価値

ここまでの説明だと、ただ闇雲に難しくなってしまってマイナス面が大きいという印象をもつかもしれません。

しかし、今回の改定は受験生にとって悪いことだけではありません。むしろ、良い改定だといえます。上述したとおり、現代のビジネスで必要な知識の習得を目的とした改正であるため、簿記2級の価値自体は従来よりも大幅に上がるからです。

そのため、従来以上に、日商簿記検定2級を取得していることが評価される場面が増えることが予想されます。

また、だからこそ、試験に合格するために勉強するという意識だけでなく、しっかり知識を習得するという意識をもって勉強することが大事になります。

(5) 公認会計士や税理士等の上位の資格を狙う受験生にとって

今回の改正により、日商簿記2級の試験範囲と公認会計士等の試験範囲の差が縮まりました。そのため、この2級が登竜門的な資格になるかもしれません。

なお、税理士の受験資格となるのは依然として1級となり変わりません。

4.変更の時期と改定点

2016年6月に行われる第143回日商簿記検定から新しい試験範囲が適用されます。ただし、2級については、段階的に論点が増えていくことになります。

(注) 第143回(2016.6)→この表記は2016年6月に行われる第143回日商簿記検定を意味します。

(1) 日商簿記3級

簿記3級の改定は以下のとおりです。

追加される論点

・伝票の集計・管理(2級→3級)

削除される論点

・5伝票制 (消滅)

・売買目的有価証券の決算に会計処理(3級→2級)

(2) 日商簿記2級

簿記2級の改定は以下のとおりです。また、見て分かる通り、追加される論点は非常に多くなっています。

そのため、第143回(2016.6)から一括して適用ではなく、第149回(2018.8)までかけて段階的に適用となります。

 

追加される論点

第143回 (2016.6)以降に追加される論点

 ・売買目的有価証券の処理(3級→2級)

 ・子会社株式・関連会社株式・その他有価証券の処理(1級→2級)

 ・クレジット売掛金(新規)

 ・電子記録債権・電子記録債務(1級→2級)

 ・貸倒引当金の個別評価(新規)

 ・貸倒引当金繰入の記載区分(新規)

 ・賞与引当金・返品調整引当金の例示(注意喚起)

 ・販売のつど売上原価を振り替える処理(新規)

 ・有形固定資産の割賦購入(新規)

 ・ソフトウェアの処理(1級→2級)

 ・収益認識基準・役務活動の例示(注意喚起)

 ・繰延処理しない費用の例示(注意喚起)

 ・株主資本等変動計算書の出題範囲の例示(注意喚起)

 ・株主資本の減額処理(新規)

 ・本支店会計の意義・目的を追加(注意喚起)

 

146回 (2017.6) 以降に追加される論点

・有形固定資産の圧縮記帳(新規)

・リース取引の処理(1級→2級)

・外貨建取引の処理(1級→2級)

・課税所得の算定方法(新規)

・連結会計の処理(アップストリーム以外)(1級→2級)

第149回(2018.6)以降に追加される論点

・税効果会計の処理(1級→2級)

・製造業を営む会社の決算処理(新規)

・連結会計の処理(アップストリーム)(1級→2級)

第143回(2016.6)以降に削除される論点

・仕訳帳の分割(消滅)

・保証債務の処理(2級→1級)

・荷為替手形(2級→1級)

・特殊商品売買の処理(2級→1級)

・繰延資産の処理(2級→1級)

・大陸式決算法(消滅)

・社債の処理(2級→1級)

・本支店会計の未達事項・内部利益の処理(消滅)

(3) 日商簿記1級

従来簿記1級の試験範囲だった論点の多くが2級の試験範囲になりましたが、2級の試験範囲は1級の試験範囲であるため、実質変更点はありません。

なお、3級・2級から削除された論点で消滅というものは1級においても試験範囲から削除されます。

5.受験目標と勉強方法

勉強方法について説明します。まずは、受験する回(受験日)を決めましょう。

(1) 第141回(2015.11)、第142回(2016.2)を受験する場合

従来の試験対策のまま受験ができますが、商工会議所は以下の様な文章を掲載しています。

平成27年度に適用される区分表に改定事項はありませんが、上記の平成28年度以降に向けた改定に伴い、平成27年度の簿記検定試験においては、(平成27年度から平成28年度にかけて継続的に学習する受験者等を考慮し)平成28年度以降も引き続き当該級の範囲となっている内容を中心に出題することといたします。

つまり、第141回(2015.11)・第142回(2015.11)においては、第143回(2016.6)以降に、その級から削除される論点は出題しない(出題される可能性は低い)ということになります。

そのため、例えば、簿記3級で売買目的有価証券の時価評価、簿記2級で社債の処理は出題がされづらいということがいえます。簿記検定においてヤマハリはしない方がいいですが、仮に時間がない等の場合には、削除される論点は省略してしまってもいいでしょう。

また、過去問については、基本的には従来のものを使用することができます。

(2) 第143回以降を受験する場合

① 使用する教材は新しい試験範囲に対応した教材で

上述のとおり第142回までの試験と第143回以降では試験範囲は大きく異なります。必ず新しい教材を使用するようにしましょう。また、第143回以降でも受験する年度によって、試験範囲は異なるため、自分の受験する回数とその試験範囲は明確にして学習するようにしましょう

2級のテキストやスクール選びの1つの方向性として、1級で実績を出しているテキストやスクールを選ぶことがおすすめです。なぜなら、2級で追加された論点の多くは1級から移って来たものであるので、1級で実績を出している教材なら新しい2級の教材も質が高いと予想できるからです。

② 過去問対策はほどほどに

試験範囲が変更されるため、従来の過去問を使用しての対策はしづらくなります。そのため、過去問よりも各種の問題集(模擬試験)を使用し対策するのがおすすめと言えます。また、商工会議所からも参考問題が公表されていますので、そちらも参考にしましょう。

③ 独学では難しくなる?

独学での合格が以前よりも大変になることが予想されます。その理由は、試験範囲が広くなるだけではありません。新たに2級に追加される論点はもともと1級の論点であったものが多いため、追加される論点は比較的難解な論点です。そのため、独学よりも、スクールなどを有効活用するのがいいでしょう。

6.改定された論点の詳細

(1) 日商簿記3級の改正された論点

伝票制(仕入伝票・売上伝票)の消滅   (3級)

実務では3伝票制(入金伝票・出金伝票・振替伝票)が一般的で、5伝票制を採用している企業は少ないのが現状です。そのため、5伝票制が除外(消滅)されることになりました。

 

伝票の集計・管理   (2級→3級)

従来、3級では伝票の起票を軸とし、2級においてその集計が出題されていましたが、今回の改定により、集計が3級に移ることになりました。また、それに伴い伝票から補助元帳への転記も3級の試験範囲となりました。これにより、3級において伝票のトータルの理解が問われることとなります。

 

売買目的有価証券の時価評価   (3級→2級)

売買目的有価証券は投機的な有価証券に関する会計処理ですが、3級が対象とする個人商店ではそのような取引をすることはまれです。そのため、売買目的有価証券の時価評価は3級から除外され2級の試験範囲となりました。なお、今回除外されたのは有価証券の決算に関する処理のみであり、有価証券の取得および売却といった期中取引は依然として3級の試験範囲であるという点は留意が必要です。

(2) 日商簿記2級の改正された論点

「記帳内容の集計・把握」を明示、仕訳帳の分割を除外   (消滅)

仕訳帳の分割とは特殊仕訳帳およびその帳簿の体系に関する論点です。特殊仕訳帳自体は現在の実務ではあまり用いられていません。そのため、仕訳帳の分割は試験範囲から除外(消滅)されることになりました。ただし、補助簿自体は現在も内部牽制上有用な側面があります。そのため、補助簿の記帳内容から取引内容を理解し、必要なデータを集計できる能力は現在も必要です。そのため、その点を明示するために「記帳内容の集計・把握」という文言が追加されました。

 

有価証券の保有目的毎の会計処理   (3級→2級、1級→2級)

有価証券の保有目的は、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式、その他有価証券という4つがあります。この内、従来は売買目的有価証券が3級、満期保有目的の債券が2級、それ以外は1級の試験範囲でした。しかし、今回の改定に伴って、これら4つの会計処理はすべて2級の試験範囲になることになりました。

なお、保有目的の変更、部分純資産直入法、減損処理、外貨建有価証券、利息法による償却原価法については従来通り1級の試験範囲となっています。

 

クレジット売掛金   (新規追加)

クレジットカードを用いた取引は昨今一般的となっていますが、従来は日商簿記検定において出題されることはありませんでした。そのため、今回の改定に伴い新たに2級の試験範囲となりました。

【仕訳例】

商品1,000円をクレジット払いの条件で販売した。なお、信販会社へのクレジット手数料は販売代金の2%であり、販売時に認識する。

借方金額貸方金額
クレジット売掛金980売上1,000
支払手数料20

上記クレジット代金が当座預金口座に入金された。

借方金額貸方金額
当座預金980クレジット売掛金980

 

保証債務の計上・取崩   (2級→1級)

手形の裏書・割引時に保証債務を時価で負債計上する実務はほとんど行われていません。そのため、2級の試験範囲から除外されました。

 

荷為替手形   (2級→1級)

決済・輸送手段の発達により遠隔地間の取引において荷為替が取り組まれるケースは少なくなっています。そのため2級の試験範囲から削除されました。

 

電子記録債権・債務   (1級→2級)

従来の手形には、紛失・盗難や印紙税の負担など様々なデメリットがありますが、電子記録債権・債務それらのデメリットを克服できるものであるため、実務において急速に普及しています。このような現状を鑑みて2級の試験範囲となりました。

 

【仕訳例】

仕入掛代金1,000円について、発生記録の請求を行い、電子記録債務1,000円が生じた。

借方金額貸方金額
買掛金1,000電子記録債務1,000

 

売上掛代金2,000円について、発生記録の請求を行い、相手側の承諾を得て、電子記録債権が2,000円が生じた。

借方金額貸方金額
電子記録債権2,000売掛金2,000

 

譲渡記録により、上記の電子記録債権2,000円を現金1,900円と引き換えに譲渡した。

借方金額貸方金額
現金1,900電子記録債権2,000
電子記録債権売却損100

 

貸倒見積高の個別評価   (1級→2級)

従来、貸倒見積高の計算は過去の貸倒実績率に基づく方法が出題されていました。しかし、実務においてはそれ以外にも個別の債権の回収不能額を見積もる個別評価も広く行われているため、2級の試験範囲となりました。なお、実際には一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等の3つの区分に従って貸倒見積高を計算しますが、当該内容については1級の試験範囲であるため、2級では当該区分については学習の必要はありません。

 

【仕訳例】

期末における売掛金残高は7,000円であった。売掛金の内2,000円については、債務者の財政状態が悪化したため、その回収不能額を40%と見積もって貸倒引当金を設定する。それ以外の売掛金は過去の貸倒実績率2%にもとづき貸倒引当金を設定する。なお、期末における貸倒引当金残高は20円である。

借方金額貸方金額
貸倒引当金繰入880貸倒引当金880

※ 貸倒見積高:2,000円×40%+5,000円×2%=900円

※ 貸倒引当金繰入:900円-20円=880円

 

貸倒引当金繰入額の損益計算書における表示   (明示)

売掛金や受取手形などの営業債権に対する貸倒引当金繰入額は、損益計算書上「販売費および一般管理費」の区分に計上されます。対して、貸付金などの営業外債権に対する貸倒引当金繰入額は、損益計算書上「営業外費用」の区分に計上されます。当該内容は、以前から試験範囲と考えられていたものの明示はされていませんでしたが、重要な内容であるため、今回の改定により明示されることになりました。

 

賞与引当金・返品調整引当金   (明示)

従来、引当金の試験範囲は、貸倒懸念債権・商品(製品)保証引当金・売上割戻引当金・退職給付引当金・修繕引当金・その他の引当金となっていました。今回の改定により、その他の引当金には具体的に賞与引当金・返品調整引当金が含まれることが明示されました。

 

商品を販売する都度売上原価勘定に振り替える方法   (新規)

従来の試験では、売上原価の算定を年度末の決算整理事項として処理していましたが、実務では、商品の販売を行った時点でその都度売上原価を計上することが一般的になっています。これは、即時に売上原価を算定することが損益管理に有効だからです。

 

【仕訳例】

当社は商品を販売する都度売上原価を商品勘定から売上原価勘定に振り替える方法を採用している。

商品を@100円で10個仕入れた。代金は現金で支払っている。

借方金額貸方金額
商品1,000現金1,000

上記の商品の内、6個を@300円で販売し、代金は掛けとした。

借方金額貸方金額
売掛金1,800売上1,800
売上原価600商品600

 

月次決算   (新規)

現在ほとんどの企業は月次決算を行うことで、月次で業績を把握し経営活動に役立ています。このような状況を鑑み、新たに出題範囲となりました。なお、月次決算といっても、特段新たな勘定科目・会計処理が追加されるわけではありません。

 

特殊商品売買   (2級→1級)

特殊商品売買は一部のものを除き現在の実務ではあまり用いられていません。そのため2級の試験範囲から削除されました。

 

有形固定資産の割賦購入   (明示)

新たに2級の試験範囲となったリース取引を理解する上で、有形固定資産の割賦購入の会計処理を勉強することはとても有用であるため、今回試験範囲に明示されました。

 

圧縮記帳   (1級→2級)

圧縮記帳は、実務に広く普及しているため2級の試験範囲となりました。圧縮記帳の会計処理は、直接減額方式と積立金方式とがありますが、2級においては簡易な方式である直接減額方式のみが試験範囲となります。

 

【仕訳】

備品の購入にあたり、国庫補助金100,000円を受け入れ、当座預金口座に入金された。

借方金額貸方金額
当座預金100,000国庫補助金受入益100,000

国庫助成対象の備品を購入し500,000円を現金で支払い使用を開始した。

借方金額貸方金額
備品500,000現金500,000

決算日に直接減額方式による圧縮記帳の処理を行う。

借方金額貸方金額
固定資産圧縮損100,000備品100,000

決算日に減価償却(耐用年数5年、残存価額ゼロ)を行う。なお、当期の使用期間は6ヶ月である。

借方金額貸方金額
減価償却費40,000減価償却費累計額40,000

※ 減価償却費:(500,000円-100,000円)÷5年×6ヶ月/12ヶ月=40,000円

 

ソフトウェア   (1級→2級)

ITの普及に伴い一般企業においてもソフトウェアを資産計上することは特殊ではない状況になっています。そのため、2級の試験範囲となりました。なお、ソフトウェアは「自社利用目的」と「市場販売目的」の2つがありますが、2級の試験範囲は「自社利用目的」のみになります。

【仕訳】

自社利用目的でソフトウェアを取得し、代金100,000円を小切手で支払った。

借方金額貸方金額
ソフトウェア100,000当座預金100,000

 

決算にあたり、定額法、償却期間5年で減価償却を行う

借方金額貸方金額
ソフトウェア償却20,000ソフトウェア20,000

 

繰延資産   (2級→1級)

繰延資産を実務上資産計上することは極めて稀であるため、2級の試験範囲から削除し、1級の出題範囲となりました。なお、2級の試験範囲から削除されるのは資産計上する場合の会計処理であり、発生時に費用処理する会計処理は引き続き2級の試験範囲内となります。

 

リース取引   (1級→2級)

リース取引は大企業のみならず中小企業においても幅広く普及しているため2級の試験範囲となります。ただし、貸手の会計処理、利息法、セールアンドリースバック取引などは1級の試験範囲となります。

なお、本来リース取引の会計処理は2級からすると難解であるため、問題文での指示にもとづいて受験者が容易に答えることができるように配慮される形式になります。

【仕訳】

当期首に備品をリースした。リースの条件は、年間リース料720,000円、リース期間5年、代金は後払いである。なお、会計処理は利子込み法を採用する。

借方金額貸方金額
リース資産3,600,000リース債務3,600,000

 

当期末にリース料を現金で支払った。

借方金額貸方金額
リース債務720,000現金720,000

 

決算に際して減価償却を行う。なお、耐用年数は5年、残存価額はゼロである。

借方金額貸方金額
減価償却費720,000減価償却費累計額720,000

※ 減価償却費:3,600,000円÷5年=720,000円

 

外貨建取引   (1級→2級)

企業活動のグローバル化に伴い、中小企業においても、海外との取引は増加しています。そのため、外貨建取引も2級の試験範囲となりました。具体的には、仕入や売上げなどの企業の営業活に関連する取引およびそれに対する為替予約が試験範囲となります。ただし、為替予約の会計処理の内、独立処理は2級の試験範囲とはならないため、振当処理のみが試験範囲となります。また、本来直先差額は期間按分しますが、受験者の負担を考慮し、直々差額と同様に当期の損益とする会計処理になります。

 

【仕訳】

アメリカの得意先に商品500ドルを輸出し、代金は掛けとした。なお、輸出時の直物為替相場は1ドル=100円である。

借方金額貸方金額
売掛金50,000売上50,000

 

決算日を迎えたため、売掛金について換算替えを行う。なお、決算時の直物為替相場は1ドル=105円である。

借方金額貸方金額
売掛金2,500為替差損益2,500

※ 為替差損益:500ドル×(105円-100円)=2,500円

 

翌期になり、売掛金500ドルが当座預金に入金された。なお、当該日における直物為替相場は1ドル=102円である。

借方金額貸方金額
当座預金51,000売掛金52,500
為替差損益1,500

※ 為替差損益:500ドル×(102円-105円)=1,500円

 

【仕訳】

アメリカの得意先に商品500ドルを輸出し、代金は掛けとした。なお、輸出時の直物為替相場は1ドル=100円である。

借方金額貸方金額
売掛金50,000売上50,000

 

後日、上記売掛金について支払額を固定するために、1ドル=110円で為替予約契約を締結した。なお、直先差額は重要性が乏しいため予約日の属する期の損益として処理する。なお、予約日の直物為替相場は1ドル=106円である。

借方金額貸方金額
売掛金5,000為替差損益5,000

※ 為替差損益:500ドル×(110円-100円)=5,000円

 

上記売掛金が決済され当座預金に入金された。

借方金額貸方金額
当座預金55,000売掛金55,000

 

収益・費用の認識基準(引渡基準・出荷基準)   (新規)

収益の認識基準は実現主義であるが、具体的には、引渡基準や検収基準そして出荷基準が実務において広く採用されています。これらを理解する必要性から試験範囲に加わりました。

【仕訳】

得意先から商品50,000円の注文を受け、代金は掛けにて発送した。当社は収益の認識基準として検収基準を採用している。

仕訳なし

 

得意先から商品が無事届き検収が完了したとの連絡を受けた。

借方金額貸方金額
売掛金50,000売上50,000

 

 

役務収益・役務費用   (新規)

従来の商業簿記では商品売買を営む企業を想定した出題がなされてきましたが、現代では商品売買だけでなく、サービス業を営む企業も増加しています。そのため、サービス業を対象とした会計処理が新たに試験範囲となりました。

【仕訳】

資格受験の受験学校を経営している当社は、8月21日に翌月開講予定の講座の料金150,000円を現金で受け取った。当該講座の受講期間は1年間である。

借方金額貸方金額
現金150,000前受金150,000

 

決算日(3月末日)を迎えた。上記の講座は、当期末現在、全体の6割が完了している状態である。

借方金額貸方金額
前受金90,000売上90,000

 

 

課税所得の算定方法   (新規)

税効果会計が新たに試験範囲に加わりました。税効果会計を理解するためには、課税所得の計算を理解していることが前提になります。そのため、新たに課税所得の算定が試験範囲に加わりました。

 

税効果会計   (1級→2級)

税効果会計は上場企業のほぼすべての会社が適用しており、中小企業においても相当程度普及しているため試験範囲に加わりました。ただし、2級においては、簡易なもののみが出題となります。具体的には、引当金、減価償却、その他有価証券の時価評価差額などが該当します。

【仕訳】

売上債権に対する貸倒引当金50,000円を計上したが、税法上は当該50,000円の損金算入は否認された。なお、法定実効税率は40%である。

借方金額貸方金額
繰延税金資産20,000法人税等調整額20,000

※ 法人税等調整額:50,000円×40%=20,000円

 

翌期になり上記売上債権が貸倒れたため、課税所得の計算に当たり50,000円の損金算入が認められた。

借方金額貸方金額
法人税等調整額20,000繰延税金資産20,000

 

【仕訳】

100,000円で取得したその他有価証券の時価が当期末に150,000円となったため、時価評価を行う。なお、法定実効税率は40%である。

借方金額貸方金額
その他有価証券50,000その他有価証券評価差額金30,000
繰延税金負債20,000

 

製造業を営む会社の決算処理   (新規)

製造業特有の期末の決算整理や財務諸表を作成を問う問題が従来はなかったため、今回の改定により追加されました。

 

大陸式決算法   (消滅)

帳簿の締切方法として英米式と大陸式という2つがあります。しかし、多くの企業では英米式を採用しているため、除外(消滅)されることになりました。

 

株主資本等変動計算書   (明示)

株主資本等変動計算書は従来から2級の試験範囲でしたが、具体的な内容が明示されていませんでした。今回の改定に伴って、株主資本に係る増減事由およびその他有価証券評価差額金の増減のみが出題されることが明示されました。

 

株主資本係数の変動  (1級→2級)

会社法の改正により、株主資本の係数の変動は比較的容易にできるようになりました。会計処理自体も特に難しくないため、2級の試験範囲となりました。

【仕訳】

当社は株主総会を開催し、赤字補填のため別途積立金30,000円と利益準備金50,000円を取り崩すことが承認された。

借方金額貸方金額
別途積立金30,000繰越利益剰余金80,000
利益準備金50,000

 

当社は株主総会を開催し、資本準備金10,000円を減少させ、資本金額を同額増加させることを決議した。

借方金額貸方金額
資本準備金10,000資本金10,000

 

社債   (2級→1級)

従来社債の会計処理は2級においてしばしば出題されていました。しかしながら、社債を発行できる会社は一定規模以上の大企業のみであり、多くの会社は社債を発行することができません。そのため、2級の試験範囲としては重要性が高くないため、今回の改定により社債関連の論点はすべて1級に移りました。

 

本支店会計の未達事項の整理   (消滅)

通信技術が発達した現代では未達事項が生じる余地が少なくなっており、そもそも、未達事項が生じないように内部統制が構築されていることが一般的です。そのため、試験範囲から除外(消滅)されることになりました。

 

本支店会計の内部利益の除去   (2級→1級)

内部利益は、本店・支店の業績を明らかに出来るという点よりも、振替価格を設定しそれを管理するためのコストの方が上回ってしまうため、振替価格を設定することは少ないという状況があります。そのため、2級の試験範囲から除外されることになりました。

 

 

連結会計   (1級→2級)

連結会計は、従来すべて1級の出題範囲とされてきました。しかし、現代は単体よりも連結重視のディスクロージャー制度となっています。また、個別財務諸表は簡素化に向かっています。このグループ経営を重視していく方向は大企業だけでなく中小企業においても顕著になっていくことが予想されます。こうした実社会の潮流に適合するために2級でも連結会計が出題範囲となりました。

なお、今回2級の範囲となった連結会計の論点は以下のとおりです。

資本連結(ただし、評価差額の計上、段階取得、追加取得、一部売却などは除く)

連結会社間の取引の処理

未実現損益の消去(棚卸資産、土地に限る)

さらに、未実現損益の消去の内、アップストリームは第149回 (2018.6)以降の試験範囲となり、それ以外は第146回 (2017.6)から試験範囲となります。

 

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