粉飾決算の常連?棚卸資産のリスク!

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10月15日付で、ドラッグストアを展開するマツモトキヨシホールディングスの子会社で不正会計が行われていた事実が公表されました。

今回の事例は、子会社であるイタヤマ・メディコが、複数年に渡り、架空の在庫を計上することにより利益を4億円多く計上していたという内容です。

粉飾決算や不適切会計という文言を最近は目にすることも多くなってきていますが、今回の事例の様に棚卸資産である在庫が絡む粉飾決算は典型的な手口と言えます。

今回は、棚卸資産である在庫が絡む粉飾決算の仕組みについて見ていきたいと思います。

1.棚卸資産の架空計上による粉飾決算の仕組み

利益を過大に計上したい場合には、架空売上を計上することが典型的な手口ですが、今回の事例の様に在庫を架空計上することでも利益を過大に計上することができるのです。

では、なぜ在庫を過大計上することにより、利益を押し上げることができるのでしょうか。

(1)売上原価と在庫の関係

会計上は、売上高から売上原価を控除して利益を算定していきます。そのため、利益を過大に計上する方法としては、① 売上高を過大計上する、② 売上原価を過小計上するという2つの方法が考えられます。

№9③

売上高についてはみなさん明確なイメージを持っていると思うので、①の売上高を過大計上する利益の押し上げについては理解しやすいと思います。これに対して、今回の事例は、②の売上原価を過小計上することによる利益の押し上げによって粉飾決算がなされた事例なのです。では、なぜ在庫を架空計上することによって売上原価が過少計上されることになるのでしょうか。これを理解するためには、まず、売上原価と在庫の関係について理解しなければなりません。

売上原価とは、販売した商品の購入代金や製造原価を意味しています。売上原価の算定式は、以下の通りです。

売上原価=期首の在庫+当期仕入高(当期購入高)- 期末の在庫

上記の算定式によれば、期末の在庫を過大に計上することによって、売上原価を過小に計上できることが分かると思います。売上原価と在庫の関係について理解していただけたでしょうか。

すなわち、期末の在庫を過大計上することにより売上原価が減少し、結果的に利益を増大させることができるのです。

(2)具体的な数値例

次に、具体的な数値例を用いて、今回の事例を説明いたします。例えば、期首に在庫を10億円保有しており、当期中に100億円の仕入を行った場合を考えてみましょう。そして、売上高が150億円である場合の利益は、期末の在庫の額により以下の様に異なります。

№9①

期末在庫が多くなると、その分売上原価が少なくなり、利益が増大していることがわかると思います。もちろん、期末に在庫が実在している場合には問題ありません。しかし、今回のケースのように実際には存在しない在庫を架空計上することで、売上原価を過少に計上した場合には粉飾決算になってしまいます。

通常は、公認会計士の監査により、在庫の実在性は検証されています。しかし、今回の様に企業全体から見れば金額が小さい場合や、在庫の性質上、高度な専門知識を有していないと判断できない場合などは、検証の対象とならなかったり、実在性の判断に誤りが生じる可能性があるため、架空在庫の計上のリスクが高くなるのです。

2.棚卸資産の評価損に伴う粉飾決算の仕組み

上記で説明した方法以外に、棚卸資産の評価損を計上しないという手口で粉飾決算がなされる場合もあります。会計上は、保有している在庫の価値が低下している場合には、評価損を計上し、在庫の金額を減少させないといけないことになっています。

たとえば、20億円で購入した在庫を保有しても、賞味期限が切れているなどの理由で、今後販売することができないのであれば、その価値はゼロと言えます。

そのような場合には、会計上20億円を『商品評価損』などの名称で損失に計上し、在庫の金額を減少させないといけません。

ここで、商品評価損が利益に与える影響について、再び、具体的な数値を用いて説明したいと思います。先ほど説明したケース1の期末在庫が20億円ある例を用いて、在庫の評価額が、① 20億円、② 12億円、③ 0円であった場合の3パターンに分けて説明していきます。

№9②

このように、評価損を計上するか否かによって利益に大きな影響を与えます。そのため、もう売れない大量の在庫(一般的に滞留在庫と言われる)を抱えている場合であっても、本来計上すべき評価損を意図的に計上しないことで、実質的には架空在庫を計上しているのと同様の効果を得ることができてしまうのです。

この商品評価損を計上しないことによる粉飾決算を見抜くのは、在庫の架空計上により粉飾決算を見抜くよりも難しいです。消費者に販売されているような商品であれば、価値があるのかないのかといった判断も付きやすいですが、半導体のような高度な部品など、特殊な専門家でなければ判断できないような商品のものは、「○○円で売れるんです」と言われると、なかなか自信を持って否定できないのです。

このように、棚卸資産は、架空計上や評価損の不計上によって、粉飾決算の手口として利用されることがあるのです。

3.今回のマツキヨの事例

今回のマツキヨの事例は、架空在庫の計上ですので、公認会計士がしっかりと在庫の実在性を検証していれば確認できたとも言えます。しかし、金額も大きくなく、さらに、子会社の社長が意図的に粉飾を行っていたため、簡単には発見できないことも多いのが現状です。

今後益々企業集団が複雑化していく中で、子会社や海外子会社の不正会計のリスクは益々高まっていくので、その点について、経営者自身も、投資家も特に注意する必要があると言えます。

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